折れたロッドをソリッドチューンで修理
2019年4月のブログです。
バスロッドのティップ折れを復元させる
ロッドのティップが折れの状況は・・・
友人からバスロッドのティップが折れてしまったから、直してほしいと依頼。
現物を確認すると、トップガイド下の一番ガイドのすぐ下で折れちゃってます。
折れた部分を綺麗にしてトップガイドを付ける応急処置はせずに、しっかりとロッドのパフォーマンスを復活させるためにティップを復元していきたいと思います。
トップガイドすぐ下で折れた場合なら、トップガイドを付け直す方法で問題ないのですが、今回の破損状況はティップから20センチほどで折れてしまっているため、その個所にトップガイドをつけるとかなり硬くなってしまい使い物にならなくなります・・・。
ティップ折れの原因は
①ファイト中にロッドを立てすぎてしまう
②ルアーを巻きすぎてしまい、ルアーをトップガイドにぶつかってから、さらに巻き込んでしまう
③ラインがティップに絡んだまま、フッキングしてしまったりキャストしてしまう
④フッキングミスで、飛んできたルアーがティップにぶつかってしまう
⑤ラインをガイドに通して、ラインを手前に引っ張ってしまう
⑥根掛かりをロッドティップで外そうとしてしまう
上記の理由でティップ折れに繋がることがほとんどかと思います。
そのようなトラブルで、ティップが折れた場合は、カーボンソリッドを繋いでソリッドティップ化することで蘇ります。
ソリッドティップチューンてやつですね!
それでは、折れたロッドのソリッドティップ化の手順をご紹介したいと思います。
手順1 ソリッドティップを継ぐ位置でブランクスをカット
まずは、ガイドを取り外します
カーボンソリッドとの繋ぎ目は、補強と繋ぎ目を隠しす必要性があります。
そのため、若干の勇気が要りますが、折れた位置よりさらにその下の2番ガイドの位置でブランクをカットします。
画像のガイドが付いている部分です。
まずは、2番ガイドをカッターを使って、ブランクを傷つけないように外しちゃいます。
なぜ、ガイドを外したかというと、ソリッドの繋ぎ目をガイドを止めるスレッドで隠すためです。
また、ガイドの足とスレッド巻きによる、繋ぎ目の補強という意味もあります。
ブランクスをカットする
スレッドが巻いてあった位置の中間あたりで鉄の子などを用いてカットします。
これで、カット完了です。
手順2 カーボンソリッドの差込加工
カーボンソリッドの選び方
ブランクをカットしたら、次にカーボンソリッドを差し込むために、差込部分の加工をしていきます。
カットした位置の外径とカーボンソリッドの外径が合い、かつアクションが近いソリッドティップを今回は選びました。
先端は、5cmほどカットし、先径1.2mmほどになるようにしてみます。
この辺は個人の好みや、釣りのスタイルによって調整ください。
ティップの繋ぎ目であるブランクの内径が約1.2mm程しかなく、こちらのカーボンソリッドの差込部分の外径は1.8mmもあるため全く入りません。
基本的にカーボンソリッドティップの差込部分は太めに設計されているので、そもそも削る加工をしないと入らないのが厄介な所。
もう少し細くして販売してくれると工具がない方でも紙やすりで削る時間が少なくて済み、加工が楽なんですが・・・。
カーボンソリッドの差込部の加工
元々の太さだと、折れた部分に全く入りません。
そのため、ブランクの内径を広げつつ、さらにカーボンソリッドの差込部分も削って細くする作業を行います。
まずは、ティップ内径をテーパーの掛かった棒ヤスリで広げます。
次に、ブランク内部に1.5mmのストレートの穴を空けていきます。
穴を広げなくてもティップ側を多少削る程度ですっぽり入ってしまうティップを選べば、この作業は必要ありません。
ソリッドを繋げた場合どうしても繋いだ場所が硬くなり、ベントカーブが繋ぎ目だけ突っ張ってしまうことが多いのです。
綺麗な曲がりを出し、繋ぎ目に余分な負荷を与えないために自分はこの作業を行います。
この作業は、どうしても工具等が必要になってしまうため、手軽にソリッドチューンを行いたい方は、なるべく内径を広げる加工の必要がないカーボンソリッドを購入して頂くことをおすすめします。
ブランク内径を広げる1.5mmの鉄鋼用ドリル。
ヒトトキワークス工房には卓上旋盤があるため、旋盤でロッド内径を広げていきます。
ハンドドリルでも出来ますが、なるべく真っすぐ穴をあけるように心掛けてください。
※注意
①元々のブランクの穴と、広げたい穴とで大きな差がある場合は、一気にその外径の穴を空けるのではなく段階的に広げていってください。
穴の芯がずれやすくなり、ブランク破損もしやすいかと思います。
②ドリルに水につけて冷やしながら作業してください。
ブランクが熱で傷んでしまう場合があります。
次に、カーボンソリッドの差し込み部分を1.8mm→1.5mmに細くします。
旋盤がない時代は手で削ってましたが、かなり根気の要る作業になります。
スポッ!!と入りましたが、下の画像では差込が甘い状態です。
ロッド側の、内径を再度ヤスリで削って、ティップの一番太くなっている部分の手前までしっかり入るようにしないと、への字に曲がってしまうベントカーブになりますので注意が必要です。
この時、先端は、超肉薄でペランペランな状態になりますが、問題ありません!
後ほど糸を巻き付けるので、そこで強度が出るようになります。
しっかりと差し込むことが出来るとこんな感じ↓
曲げてみると、綺麗なベントカーブを描いてます。
※注意
曲げる際は差込口が割れる恐れがありますので、強度のあるテープを巻き、あまり曲げすぐないようにしましょう。
どうしても曲げたくなりますが、曲げない方が無難です。
手順3 カーボンソリッドのスパインを出す
接着の前にスパイン出しという作業を行います。 この作業がかなり重要です!!
スパインとは?
ソリッドティップを曲げながら机の上で転がすと、硬い部分と柔らかい部分があるのが分かります。
その硬い部分を『スパイン』と呼びます。(背骨とも呼ばれています)
スパインの部分を見つけてから、向きを合わせて接着してください。
スパインの特性を活かした取付方法
スピニングロッドの場合、ロッドが縦に曲がった際に柔らかいラインが曲がるよう(硬いラインが側面)にしています。
柔らかい部分が曲がるような向きに取り付けることで、キャストの際のブレがなくなり安定します。
硬い部分(スパイン)を曲がるような向きに取り付けると、キャストの安定性はなくなりますが、パワーがアップします。
この辺も、人による考え方の違いや釣り方によって適性が変わります。
手順4 ソリッドティップの接着とガイド取付
接着する際は、ティップを差し、縦横に曲がりがないか見ながら、手で調整しながら硬化するのを待ちましょう。
接着剤が硬化が完了したら、ガイドを取り付けてエポキシコーティング。
コーティングは、焦らず3回に分けて薄塗りで仕上げていくのが、失敗しないコツです。
3回のコーティングを繰り返したエポキシコーティングが乾燥しました。
基本的にコーティングは、一日一回ですが、自分の場合は、朝と夜の2回塗っています。
ですが、冬場は、夜冷え込むので、低温による硬化不良防止のために夜は塗りません。
暖かい場所ならいいですが、ヒトトキワークスの工房はかなり寒いです。
一番左側のガイドコーティングの内側で、カーボンソリッドが繋がれています。
スムーズ過ぎるぐらいの綺麗な曲がりとなっており、繋ぎ目が全く分かりません。
ラインを通しても曲げてみました。
良い曲がりです。元々のロッドの曲がりよりカーボンソリッドの方が柔らかいため、2段テーパーのロッドになった感じです。
友人も大満足のソリッドチューンになり、パワーアップして蘇りました。
これで完成です!!
これからも長くロッドを使って多くの魚に出会ってほしいです。